
前回はχ二乗検定を用いた、ABテストの正しい分析方法を軽く紹介しました。仮説検定というものです。
今回は、統計で挙げていたもう一つの多変量解析と呼ばれる分野のお話です。売上を構成する要素を分解して、売上を作っている要素を抜き出していきたいと思います。
統計をするにはまず、データを収集して、必要に応じて対数変換、1/0変換等をすることがあります。
また、ゴミ・ノイズデータがないか等を確認しクリーニングや加工などをして整えます。
その後、単変量解析、2変量解析を経て、多変量解析に進みます。多変量解析の結果が思わしくない場合、単変量解析に戻って、再度2変量解析、多変量解析に進むこともあります。
まずは単変量解析
単変量解析から簡単に解説します。
単変量解析は、結構イメージがしやすいです。例えば、気温が上がるにつれて、アイスの売り上げが上がる、というような関係は、片方の数字が分かれば、もう片方もわかる、単変量の関係です。小学校の算数で習う、比例の関係ともいえます。
次に、二変量解析
二変量解析も直感的に理解ができるかと思います。例えば、上記の気温とアイスの売り上げの関係だったら、『湿度』という変数をアイスの売り上げを決定するものとして加えると、より精度がますかと思われます。このように、何か1つの結果(目的変数)に対して、2つ
の変数(説明変数)を用いて関係性を示すものが、二変量解析です。となると、、、
多変量解析
もうお分かりですね。多変量解析とは、売上などの数字を、3つ以上の変数を用いて説明することです。ビジネスでは1つや2つの要因で売上が決まってしまうケースはほぼない(そのようなことが普通だったら、我々マーケッターの苦労もありません。。(涙))ので、実質的にビジネスに役立てるのであれば、多変量解析を使うのが望ましいかと思われます。
多変量解析の例
実際の多変量解析を使うシーンを、統計検定の問題から見てみましょう。
(参考:統計検定2015年6月21日2級試験:http://www.toukeikentei.jp/about/pastpaper/2015j/2015j_grade2.pdf)
こちらの例はウェブではない、小売りのデータですが、とっつきやすい良問なので、紹介いたします。
ある小売チェーンで、説明変数
■通行人数
■最寄り駅からの時間
■店舗面積
■作業員数
■品目数
と、目的変数として、
■売上高
のデータがそろっています。
5つある説明変数を、売上への貢献度合いで分析しなさい、という問題です。
この単なるデータの塊から、売上増を実現する『公式』がみちびき出せるのです!
わくわくしませんか?小売りの現場に限らず、あらゆるところで、このようなデータはITの進歩で蓄積させているにも関わらず、あまり活用ができているとは言えないのが、今の日本です。そういった意味で、政府の試算では、将来的に25万人のデータ人員が不足する、とも言われています。
(参考:Accenture ビッグデータ時代のデータサイエンティスト像、最も重要な能力とは
https://www.accenture.com/jp-ja/data-scientist-training-for-women-part1.aspx )
さて、上記を統計解析しますと、売上を左右する要素で、統計的に有意※と言えるものは、
■通行人数
■最寄駅からの時間
■品目数
であり、それぞれ、
■1日の通行人数が1人増えると、1週間の売上が約500円増える
■最寄り駅からの時間が1分増えると、1週間の売上が約22,350円減る
■品目数が1品増えると、1週間の売上が約4,800円増える
という分析結果になりました。
新規出店などをする際の絶好の武器になりますね。
ウェブマーケティングでももちろん使えます
ウェブ周辺は、もっとこのようなデータが扱いやすい環境がそろっていると思います。
Analyticsももちろんですが、データが自動で溜まるというのは統計上のデータ集めにおいて非常に効率的です。
ウェブでこのような多変量解析の手法で既にある一定のノウハウが確立されているのは、ウェブデザインのABテストの領域です。
「あれ?多変量解析ではなく、ABテストの話に戻るの?」と思われるかもしれませんが、ABテストができ、それを沢山の変数を設定して行える(多変量)ことが、ウェブの強みなのです。
例えば、あるページのデザインを改善する際に、
■ページ背景
■ボタンの色
■見出し文
■説明文
■モデル
など、ページを構成する要素を分け(説明変数)、それぞれで成約数や売上高(目的変数)を比較すれば、いずれ、最強の成果を上げるページが出来上がるのです。
新しいウェブマーケの手法、特にITの技術とデータの融合が可能にするウェブマーケの新しい形を紹介していきました。
旧来のウェブマーケの方法で、悶々とされている方が、新しいウェブマーケの方法に興味を持つ、きっかけになれば、幸いです。
※有意水準を5%としています。